【契約書】ウクライナの混乱を受けて考える「不可抗力」条項
ロシアとウクライナの戦闘が激烈な状況であり、
今後の予断を許さない緊迫した状況です。
この混乱を発端とした様々な事象が
「不可抗力」にあたるのか問題となる場面が、今後必ず出てきます。
日本民法において「不可抗力」の定義は規定されていませんが、
契約実務において、必ずといっていいほど、「不可抗力による免責条項」が定められます。
多くは、次のような事項を列記します。
①地震、津波、台風、豪雨、豪雪、感染症のまん延
②戦争、テロ、内乱、暴動
③政府又は政府機関の行為、法令・規則の改正
④労働争議
そして、「その他(の)不可抗力による場合」として、包括的な定めをしています。
義務の不履行があったとき、問題となる事象が
(1)これらの不可抗力の例示に該当するかを確認し、
(2)例示に該当しない場合でも、包括的な「不可抗力」に該当するかを確認し、
(3)債務不履行の原因が不可抗力によるとき、
その債務不履行は免責されることになります。
もっとも、上記(1)や(2)の不可抗力該当性について、
必ずしも一義的ではない場合には、契約の趣旨に照らした合理的な解釈が必要になります。
その際は、国際物品売買契約(通称:ウィーン売買条約、CISG)の定めが参考になります。
ウィーン売買条約
第79条 第(1)項
当事者は、自己の義務の不履行が自己の支配を超える障害によって生じたこと及び契約の締結時に当該障害を考慮することも、当該障害又はその結果を回避し、又は克服することも自己に合理的に期待することができなかったことを証明する場合には、その不履行について責任を負わない。
今回のウクライナとロシアの混乱が、様々な事象に波及していきます。
契約上の「不可抗力」に該当するかは、当該事象に関して、
当事者がどの程度リスクコントロールできたかという観点から、
個別・具体的に判断されることになるでしょう。
投稿者プロフィール
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弁護士安井健馬(ウィンクルム法律事務所 兵庫県弁護士会所属)
神戸三宮にある相続・中小企業法務・M&Aに注力した法律事務所で弁護士をしています。
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