介護と相続について教えてください

    父は、現在、特別養護老人ホームに入居して生活しています。母は父より先に亡くなっています。私は二人姉妹の姉で、妹は遠方に住んでいます。妹は父のもとに年2回程度顔をのぞかせるくらいで、何も面倒をみたことはありません。

    Q1.父の面倒のために手間も費用もかかっているのに、父が死亡したときの相続分は同じなのでしょうか。

    Q2.また、私の夫も、私の父のために手間と費用をかけていますが、父が死亡したときに妹に何か請求できないのでしょうか。

     

    1 寄与分について(Q1)

    (1) 共同相続人は、以下の方法によって、相続財産の維持や増加について特別の寄与をした場合、相続財産からその寄与分の金額を引き算して、法定相続分(特別受益を加算した金額)に寄与分を足し算した金額を相続分とすることができます(具体的相続分)(民法904条の2)。

    ①家業従事型:被相続人の事業に関する労務の提供した場合

    ②金銭出資型:財産上の給付した場合

    ③療養看護型:被相続人の療養看護をした場合

    (2) 自分の親について、面倒を見たとしても、扶養義務の範囲内であるから、「特別の寄与」といえないのではないかという問題があります(民法877条参照)。
     この場合については、扶養の内容が、被相続人との関係において通常期待される範囲を超えた貢献をしたことが求められます。

    (3) ご質問の事例は、③療養看護型に分類されます。③療養看護型の場合、職業看護人に支払うべき報酬等の看護費用が節約できたという因果関係が必要です。
     また、介護保険によるサービスを受けている場合、費用を節約できたという因果関係については、否定される可能性が高いです。
     特別養護老人ホームの場合、衣食住が調っていますので、自宅で看病する場合に比べて、寄与分が認められる可能性は低いといえるでしょう。

    2 特別寄与料について(Q2)

    質問者さんの夫は、お父様の相続人ではないので、「寄与分」の主張はできないのが原則でした。
     しかし、平成30年の民法(相続関係)の改正によって、被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(特別寄与料)の支払を求めることができるようになりました(民法1050条)。
     ご質問の場合は、寄与の内容によっては、特別寄与料の請求をすることが考えられます。

     

    3 まとめ

     このように、親や親せきの介護をした場合、一定の要件を満たせば、その労力に応じて、金銭の支払を求めることが考えられます。具体的に請求可能かどうかは、ウィンクルムにご相談ください。

     

     

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